西川紀代美のVagabond in Dublin!
『今年の6月に(山梨放送を)退社して7月からアイルランドに留学する事にしました。最低一年は行ってくるつもりです。わっはっは。行っちゃいますよー、10年来の憧れのかの地に・・・友達は「なんだってアイルランドなの?」って聞いています。「それは私の趣味だからさ!」 名付けて「西川紀代美2000年風来坊化計画 in Ireland!」』

と、いう言葉を残してふらりふらふら風来坊、ダブリンに行ってしまった西川紀代美さんからお手紙が届きました・・・。


Vagabond in Dublin:
1. マイケルの記録破られる!?
2. イニシュモア旅行記
3. Irish好み・言葉編
4. Vagabond in Scotland
5. PUBに行かなくちゃ!!!


Riverdance the Homecoming
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山梨放送 Goo! Morning
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■第5回:PUBに行かなくちゃ!!!
Sun, 4 Feb 2001 12:08:04 GMT

 アイリッシュ・ライフを語るには欠かせないのがPUBの存在である。そう、そうそれは、「お酒を飲むところ」・・・なんて、一言ではとても片付けられないくらい、アイリッシュにとっては重要な場所だ。

 そもそも、「お酒の飲み方」自体が日本人とは全く違う。日本では夕飯がてら仕事の帰りにちょいと一杯、またはちょっと温泉にでも行った時宴会しながら飲む、花見の季節などにはお弁当とビールなどなど、当たり前なのだが(そうですね?)、ほとんどのアイルランドの人々にとっては「食事と一緒にビールを飲むなんて、なに考えてんだ?」という感覚なのだ。アイリッシュはまず、家に帰って夕飯を食べてあらためて9時ぐらいからパブに行く。そして、徹底的に「飲み」に入るのだ。

 さぁ、そこで登場するアイルランドのお酒の主役といえば、GUINNESSビール。アイルランドを代表する黒ビールである。

Pint of GUINNESS!!


 パイントと呼ばれる高さ15センチほどで容量約570mlの大きなグラスにそれこそ、表面すれすれまで、なみなみと注がれて出てくる。ふんわりとした真っ白い泡の下のコクのある漆黒のビールはまさに、アイリッシュの為に存在する飲み物だ。値段はパブによってまちまちで、1パイント2.2ポンド〜2.8ポンドほど、(1アイリッシュ・ポンド=148円 1月22日現在)。アイルランド一のパイントが安いパブでは1.5ポンドということだ。(ちなみに、新宿のとあるアイリッシュ・パブでは1パイント800円・・・)ギネス片手に、多いに仲間と語り、笑い、嘆き、怒り、歌い、踊り? どれくらいの人間がこの真っ黒いビールと人生を共に歩んでいるのだろう。

 ちなみに大人の男性で一回に飲む量は「今夜はあんまり飲まなかったなぁ・・・」という時で4-5パイント。「思うままに飲んだ」という時は10パイント前後。飲みすぎた・・・となるともう20パイント近く、いやそれ以上になるのだから、あきれるを通り越して、尊敬さえしてしまう。いったい、人間のどこにそんなキャパシティーがあるのか??

典型的なパブカウンター


 もちろん、そんなに飲むと次の日に差し支えるのは当然で、彼らはウィーク・ディはほとんど飲まない。飲まないだめをして・・・金曜の夜から完全にLet's go態勢に入る。木曜の夜から土曜の夜にかけてはナイト・リンクというダブリン中心地から各地へ何本もの深夜バスが走る。お世話になっている人は非常に多い。

週末のパブはスポーツ観戦の場所


 しかし、一方で若者の特に女性のギネス離れが進んでいるようだ。実際にパブに行っても、ギネスを飲んでいる女性は男性に比べて圧倒的に少ない。やはり、「ギネスが苦手」と言うアイリッシュの友人にワケを聞いたら「だって苦いし、飲んでるところがいまいちラブリー(可愛い)じゃないでしょう?」という答えが返ってきた。味にしてもスタイルにしても人気なのは、ピンクやオレンジ、黄色のカクテル系のお酒をビンごと飲むのが、彼女達のお気に入りなのだ。

 若い男性にもギネス離れの傾向は多少有る。ギネスよりももっと軽いラガーや、サイダーと呼ばれるリンゴを発酵させて作った発泡酒が好きだ、という人も実はアイルランド国内でも増えている。そのせいか、ギネス社がこの夏発表したところでは消費量が200何十年かぶりに微減したそうだ。しかし、そんなに長い間消費が落ちていなかったなんて、それこそ本当の「ギネスもの」ではないか。

グラフトンSt.のレストランにあるビル・ウィーランのサイン入りスコア


 パブでは、一人で座って一杯のギネスをじっくり味わって新聞や本を読みつつ飲んでいるおばあさん、フィドル(バイオリンの俗称)やイーリアン・パイプスなどの楽器を持ち込んで演奏を始める頃合を見ているアマチュアの音楽家達の存在も決して珍しい、特別な存在ではないのがアイルランドのパブだ。そして、音楽が始まるとみんなで聞き入り、手拍子を打ち、時に掛け声を立て、心に正直に楽しんでいるのがよくわかる。盛りあがると、知らない者同士でも以前からの友人のようになっている。アイルランドのパブには、ギネスからでてくるマジックが漂っているようだ。

 最後に、日本人の同僚がいるアイルランド人の友人(今度は男性)にこんなことを言われたことがある。「日本人はみんな夕飯の時にビールを飲むんだって? きっと、世界一のんべぇの人種は日本人だな」

 彼は先週末、一晩で17パイント飲んでいる。


誰と一緒に飲みますか??




Written by Kiyomi Nishikawa
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