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2/2夜 郁さんの場合

2/2夜

Yujiさん

郁さん


東京最終日フォーラム前を舞台に展開する、郁さん主演の感動のチケット入手巨編!!


 2月2日。その日は朝起きたときから、心はすでに有楽町へ飛んでおりました。でも、どうしても会社を休めなかったので、せめて5時に会社を出られるようにと猛烈に集中して仕事をしました。東京公演最終日、どうしてももう一度観たかったんです。チケットないけど・・・。

 前日、会社の後輩にLOTDの話をしたら「私も観たい」と言い出しました。でも当日券狙いだし、もし行って売り切れだったら、ダフィ〜おやじをアテにするか、そのまますごすご帰ることになるかもしれない。私一人だったらいいけど、後輩まで巻き込むか? でもその子も、「そしたら夜ご飯でも食べて帰りましょうよ」と言うので、それじゃあ行ってみましょうということになったわけです。

 さて、当日券の発売は夕方5時半から。会社から有楽町へは、どんなに急いでも4〜50分。どう考えても間に合わない。しかし、このとき私の脳裏には1月30日の当日券発売ブースの光景が・・・。あの日は6時半になっても、S席が売れ残っていた。もしかしたら今日も・・・。
今思うと、激甘なことを考えていたんですね〜。

6時15分頃、東京国際フォーラムに到着。が、すでに全席SOLD OUT。しばしその場に立ち尽くす。とりあえず、ブースの前に立っていたスタッフのお兄さんに聞いてみる。

「電話予約の人が来なかったら、そのチケットを買うことはできないんですか?」
「開演10分前になっても来られなければ、キャンセルということで他のお客様にお売りする形になりますが、それほど枚数は出ないと思います・・・」

そうですか・・・と肩を落とす私たち。しばらくぼーっと周りの様子を見た後、またちょっと思い出して聞いてみる。

「あのー、そのキャンセル待ちを予約するってこと、できませんか?」
「えーとですね、5時半からの当日券発売で売り切れた後、並んでいたお客様に整理券をお配りしてまして、40枚用意した整理券は全部配布済みなんです。それ以上のキャンセルは、ほとんどないと思いますので・・・」

は〜、そうですか・・・と再びがっくり。よく見れば整理券らしき紙切れを持ったおばさんが、ブースにくっつくように立っている。でも、わざわざ有楽町まで来てこのまま帰るのは、あまりにもシャクだったので、残された手段・・・ダフ屋のおやじ・ダフィ〜を口説き落とすことにしたのです。

ビル風ひゅーひゅーのフォーラムの脇をJR有楽町駅方面へ歩くと、「チケット余んない?」という聞きなれた文句が。見ると、スーツに金縁眼鏡の、やけにインテリちっくなダフィ〜おやじ。「こっちも探してるんだー」というと、予算は?と聞かれる。実際のところ、財布には2万円用意していたけど、「定価しかない」と答えてみた。すると、「だーめだよ、それじゃあ。一番下の席だって2万からだよー。入るだけで2万だもん。定価じゃムリ」と、話にならんとばかりに笑われてしまった。しかしこのオヤジ、結局自分もチケットを持っていなかった。売るものがないくせに、人の予算を笑うとは失敬なやつ。「なんだ、持ってないのか」とこっちも話にならんと、その場を離れてさらに駅の方へ。横断歩道の近くで、また別のダフィ〜に声をかけられ、予算を答える。「出せても1万5千円しか持ってないんだもーん」と言う。もうすぐ開演。ダフィ〜だって、チケット売れずに残るよりは売れた方がいいに決まってる。だから時間ギリギリまで粘れば、そのうち妥協してくれるだろう、と思っていた。

ところがさすがに最終日。見に来る人はそれなりに気合いが入っている。ダフ屋に売ってしまう人などほとんどいない。このオヤジも同様、余りチケットを入手するのに苦労しているらしかった。でも、さっきのインテリちっくよりは話のわかるオヤジで、「2枚いるんでしょ?席離れてもいいよね?連番なんていったら相当運がよくないと今日は出ないし、おねーちゃんたちより高く買う人がいたらそっちに売っちゃうからさ。観られればいいでしょ?そしたらちょっと蹴飛ばしてくるよ」と言って、横断歩道を渡ってくる人たちに「チケット余んない?」を始めた。この「蹴飛ばす」というのはダフィ〜用語なのかどうか、余りチケットを持ってる人からGetすることらしく、その後このオヤジは何かと「もうちょっと待ってな、蹴飛ばしてくるから」と言っていた。

そして無情にも開演時間が・・・。ハンドマイクを持ったスタッフが、「演出の都合上、1曲目は曲止めとなります。開演後は、1曲目が終了するまで入れませんので、お急ぎください」とアナウンス。後輩は、もうあきらめムード。ダフ屋のオヤジは「じゃあオレのタップを見せてやるよ」と踊りだす。

そしてとうとうオヤジもあきらめた。
「おねーちゃんたち、だめだわ。チケット取れない。ごめんねー」

ばかやろー。この寒いところで30分も待たせておいて、ごめんねじゃすまないんだよー!と心の中で悪態をつきつつ、あまりにも体が冷えてしまったので、もう一度フォーラムの中へ。ほとんど人がいなくなった入り口。まだ当日券のブースに立つお兄さんの前を横切り、受付の奥を羨ましげに見る私と後輩。ちらほらといたお客さんもついにいなくなり、静かなロビー。聞こえてくる「CRY OF THE CELTS」の音楽が虚しく響く・・・。

と、半分灰になりかかった私たちの前を、スタッフらしきお姉さんがブースの方へ歩いていく。手にはチケットらしき紙を持っている。むむ?あれはチケットか? 「どうするの、それ?」という顔で様子を伺っていると、ブース前にいたお兄さんが、こちらに来るではないか。

「今、キャンセルのチケットが2枚入りまして、S席なのですがいかがですか?」

頭の中で祝福の鐘が鳴り響き、天使のラッパが聞こえてきたこの瞬間。

「買います、買います!!」
かじりつきそうな勢いで言うと、「ではお席の場所をこちらで確認してください」とブースへ連れていかれて、座席表を見る。真ん中よりちょっと後ろ。でもステージにはほぼ真正面!

チケットを受け取り、お金を払い(もちろん定価)、受付を通る。「いらっしゃいませ」と迎えられ、そこは別世界。いきなりVIPのような扱い。実はこのとき、別のスタッフがブースに走ってきて「さっきのチケットくれない?」と言っていたんです。「もう売れちゃったよ」と聞いて、かなり驚いていました。間一髪でした。

「もう開演しておりますので、1曲目が終わるまではロビーでモニターをご覧になってください」
はいはい。もうなんでもします。

エスカレーターを上がって、扉の横。ステージの様子をスタッフがチェックするためのモニタが置かれていて、暗転のタイミングを見て、お客さんを中に入れてくれるわけですね。しかしこれ、ステージを正面から撮ってて、かなり羨ましい映像。録画して持って帰りたいくらいです。暗転して、Elinさまの歌を聴きながら席につき、その後はLOTDの世界へ・・・。

休憩の時間には、後輩とこの超ラッキーをひたすら喜びあいました。日頃の行いですよねーという後輩に、そうだねと応えつつも、これはきっとマイケル様が空から見ていて、チケットを落としてくれたのだわ・・・と思いたくなりました。(別にマイケル様が星になってしまったわけじゃないですが)

そして、ダフィ〜おやじ達に「へへーん!S席で観れちゃったよ〜。もちろん定価さ〜!!」と言ってやりたかったです。(人の足下見やがって〜)

本当にこのチケットは、運だけで手に入ったものです。
もしダフ屋にふられた後、フォーラムに戻らなかったら・・・。
チケットを持ったお姉さんが、もう少し来るのが遅かったら・・・。
まさに、奇跡の夜。
後輩もとても喜んでくれて、連れてきた甲斐がありました。



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