ライブ&レポート:Dancing on Dangerous Ground

 あの注目の舞台、DODGをロンドンまで観にいった熊谷さんのレポートであります。
2000
posted by 熊谷

1月8日(金)、ロンドンでDancing on Dangerous Ground を観てまいりました。とんがりやまさんの度重なるコールにひきづりだされての初めての書き込みとなります。よろしく。

 その前に。

 年末、アイルランドのドニゴール郡グウィードァというところのケーリーの会場で、えらく上手な年輩のご夫婦とセットが一緒になったんですが、「この前、息子が日本に行ったんだ」とおっしゃる。話を聞いてみると、なっなんとブレンダン・デ・ガーリ様のご両親!「来年(今年)9月にまた日本にいくとかで、ついでだからいっしょに行こうって息子が言ってくれてるんだ」とのこと。女性ファンの皆様、「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」とも申します(あ、意味がちがうか)。いまから大接待攻勢なぞを計画されてはいかが。

 さて本題。昨年9月の下旬に、DODGの日程が正式発表になっていることを知ったんですが、ちょうど年末年始にアイルランド旅行を予定していたこともあり、楽日の前日の1月8日のチケットをThe Celtic Cafe ともリンクしているチケット業者、Albemarle of London's West End Theatre Guideのウェブから申し込みました。1週間ほどでチケットが到着。それにしても便利な世の中になったもんです。席はF-18で、6列目のど真ん中。いやぁ、生きててよかった。

 ところが11月の下旬になって、座席が改造されていろいろ変更になっているらしいとの噂がメールで流れました。上記 "Albemarle of .... "に問い合わせると、1階席の前半分がbe raised and made flatになったため全体が見えにくくなった。ゆえに他の席とチケットを交換するか一部を払い戻すとのアナウンス。すぐに代わりのチケットを送ってきてくれました。今度のはO-14、15列目の真ん中よりやや上手寄り。それにしても、なんで席が浮き上がって平らになるとステージが見えにくくなるんだ?

 1月8日(金)当日、7時過ぎにコヴェント・ガーデン駅に着。少し歩くとDODGの赤っぽい看板がライトで照らされたドルリーレイン・シアターが見えてきました。客席の開場は7時半とのことでしたが、すでにロビーには入れ、ここでとんがりやまさんに頼まれてたパンフレットを購入(1部4ポンド)。

 7時半に場内に入って席の件を合点。ステージ自体が積み増しというか、高くなっているんですね。全体のセットも結構大がかり。上下(かみしも)にやぐらが組まれ、ブリッジ(というんでしょうか)まで渡されています。後で会場係の女性に尋ねたら、ステージの位置は通常より 1.5mくらい高いとのこと。なるほど、そのためにすり鉢状に下に向かってる1階席の前半分がbe raised and made flatになったわけですか。

 DODGそのものですが、紀元4世紀頃のアイルランドを舞台にした古代英雄伝説、フィン・マクールとフィアナ騎士団をめぐる物語の一つ、「騎士ディルムッドと王女グラーニャの悲劇」を題材にしたもの。悲劇っつーか、妻に先立たれたフィン・マクールに嫁入りすることになったグラーニャが「あんな年寄り、ヤダ」と、フィンの部下で若くてかっこいいディルムッドをそそのかして駆け落ちしてしてしまうんですが、そのためディルムッドは主君に追われ、命を落としてしまうというお話です。もちろん伝説ですから、いくつかのバリエイションがあり、詳しくは、『ケルトの神話』井村君枝・筑摩書房、『ケルト・ファンタジィ』井村君枝・波書房、等をご覧ください)。

英語の達者な方は、The Celtic Cafe のリンクから The Irish Studies Pages へどうぞ。※英語のアナウンスでは、ディルムッドは”ディァムード”に近く聞こえました。

 ショーの構成は、1部がグラーニャがフィン・マクールの王宮にやってくるまで、フィアナ騎士団始めさまざまな人たちが彼女を歓迎する様が描かれ、2部は、結婚式から二人の逃亡と探索、そしてディルムッドの死、という展開になっています。

 主役のディルムッドとグラーニャはもちろんコリンとジーン、フィン・マクールに舞台俳優のトニー・ケンプ(私は知らなかったんですが、イギリスでは結構有名とのこと)、フィオナ騎士団および王宮の護衛、侍女などを兼ねるのがグレン・シンプスン(リバーダンス NYビデオでトレイディング・タップスに出てる人とのこと)がキャプテンを務める28人のダンス・チーム(リバーダンス各組およびLOD経験者多数とのこと。あとジーンの妹のキャラも加わってます)。

 全体の印象ですが、まだまだアイリッシュ・ダンスでこういう劇を構成していくのは難しいのかなぁ、というのが正直なところです。リバーダンスを去った理由について、「毎日同じことをやるのに疲れた」とコメントしていたジーンですから、物量でではなく、表現の深みで「次」を切り開きたいというのは分かるんですけどね。1部は、絢爛たるアイリッシュ・ダンスが次々披露されて行くもののストーリーとのつながりがよくわからんし、2部はストーリー展開が急なあまり個々のパートがぶつ切りになっているような印象を受けてしまいました。もとの話を知らなくても楽しめます、というのがほめ言葉じゃなくなってしまいそうな……。ここらは、振り付けよりも、全体のディレクターの仕事かな?個々のダンスは、例えば LOD 等と比べたら派手さはないですが、とても素晴らしい(さりげなく、ほんとにさりげなく、びっくりするようなテクが配置されてます)だけに、何とかもう一工夫を期待したいもの。無理に一本のストーリーにするよりも、ハイライトとなる場面を取り出して(歌舞伎で「何々の段」を上演するような)構成するとか。ま、素人が口を出しても仕方ありませんがね。

 「FOFのジーン&コリン版」を期待してた?ロンドンの新聞の評は芳しくないようですが、それでも8日は9割方の席が埋まってましたし、2月5日まで延長されるくらいですから、興行的にはまぁまぁというところでしょうか。某スポーツの紙のコラムによれば「この秋のウエスト・エンドの新作は『ママミア』以外はそろって討ち死に」とのことですから、上々の部類でしょう。

 音楽は、現役最強のアイリッシュ・アメリカンバンドのソーラスが担当。リーダーのシェイマス・イーガンがすべて作曲しているんですが、いつものソーラスとはひと味違う演奏を聴かせています。彼らをもう少し登場させて欲しかったな。一部の最後とカーテンコールの時、ちょっと姿をあらわすだけなんですから、あれじゃあ「ちゃんと生演奏してまっせ」というお披露目をしてるだけみたい。

 今のところ、3月からのニューヨーク公演は予定通りのようですが、ロイターの記事にあったように日本にも来るのかな(そうなると音楽は?)。いずれにせよ、観に行かれるのなら、1階よりも「2階席の真ん前」がおすすめです。前述のように、やぐらやブリッジを使って、上へ、下へという動き(言葉でうまく説明できないのがもどかしい)になりますので、2階からの方が全体をよく見渡せると思います。


(moriy注:このレポートをいただいたあと、ちょこっと質問などさせていただいたんですが、その返信メールからも少し引用します。)

 リバーダンスの時みたいみたいに、冒頭とあと何カ所かナレーションが入りますが、せりふは一切ありません。

 やっぱり「悲劇」ですから、リバーダンスみたいに「最後にすべてが合流してRiverdance International! 」とか、 LOTDやFOFのように「光の王子さまはやっぱり強かった!」みたいに押せ押せでラストを迎えるというわけにいきませんからね。しかも、観客にはどうしたってその二つが頭の中にありますから、演出が難しいのは確かなんですけどね。

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